「プルミエ・ナパヴァレー」希少バックヴィンテージテイスティング

3月某日、ナパヴァレー・ヴィントナーズ・ジャパン主催のPremiere Napa Valley Tasting Seminarに参加してきました。希少なワインをテイスティングする機会がありましたので、レポートします。

Premiere Napa Valley

プルミエ・ナパヴァレーとはナパヴァレーで行われるチャリティーオークションイベント。多くのワイン生産者がこのオークション用にワインをつくり出品し、オークションの収益はナパ・ヴァレーの産業を守り発展させる生産者の活動に使われます。プルミエ・ナパヴァレーに出品されるワインのコンセプトは「Collectable, Creative and Incomparable(コレクションする価値があり、創造的で比類のないワイン)」。プルミエ・ナパヴァレーでしか造られない特別なブレンド、ワインメイキング、品種など、生産者の創意が発揮される少量生産のワインが出品されています。

今回テイスティングしたのは次の2アイテム。どちらも1999年でした。このヴィンテージはブドウの生育期間は冷涼な気候が続き、ハングタイムを十分長くとることができたヴィンテージです。一般的なカリフォルニアに比べパワーは控えめで抑えがきいており、長い熟成ポテンシャルを持ち、エレガンスも光るヴィンテージです。

 

1.Joseph Phelps Vineyards / Syrah (80%) Cabernet Sauvignon (20%) Lot No.47 1999

ジョセフ・フェルプスは今でこそインシグニアのカベルネ主体のボルドーブレンドで知られていますが、ワイナリー設立当初はまだナパ・ヴァレーにどの品種が適しているのか地域として定まっていない状態でしたので、様々な品種を試していた時期があります。当時流行っていたコート・ロティに倣って、カリフォルニアでシラーのヴァラエタルワインを初めて造った生産者としても知られており、そのシラーが主体の希少なバックヴィンテージです。

≪テイスティングノート≫
ドライにした黒い果実を主体に、ダージリンティー、杉、ペッパーベーコンに黒オリーヴ、スモークと熟成によるアロマが開いており、深みのある香りが広がります。味わいはドライ。繊細で長く続く酸とパウダリーでこなれたタンニン。アルコールによる重みはさほど感じませんが、余韻に広がるティーやスモークなどの複雑な香りが、ワインのスケールの大きさを物語っています。 

2.Clos Pegase / Riverbed Block, Palisades Vineyards Cabernet Sauvignon Lot No.111 1999

このワイナリーは日本と縁が深いワイナリーで、創始者イアン・シュラムの奥様は日本人でした。学生時代に休暇で訪れた日本でミツコ夫人と出会い、その後ヨーロッパでワイン造りを学んだ後、ナパ・ヴァレーでワイン造りを始めました。ワイナリーがカーネロスに所有する畑にはMitsuko’s Vineyardの名が付いています。このワインはヴァレー奥地、カリストガの単一畑のカベルネ・ソーヴィニヨン。5ケース限定生産という希少品です。

≪テイスティングノート≫
色も1に比べやや淡く、香りにも赤系果実が混じり、腐葉土や杉などの熟成香。香りも強すぎず、鼻を自然に抜けていくような印象です。1と同様のドライなアタックに、余韻まで続く酸と、緻密なタンニンをもち、洗練されたバランスを感じます。余韻もエレガントな酸が続き、1よりも細く長く残っていきます。熟成のピークを迎えていて、味わいもほどけて調和に満ちている印象です。

 

合わせた料理はローストビーフ。それに塩と種々の薬味(パセリを使った爽やかなもの、カカオニブを使ったペパリーなもの。ブルーベリーやバルサミコなどのジャム)をつけながら頂きました。ローストビーフの滑らかな触感が、熟成したワインのテクスチュアとぴったり合って素晴らしかったです。薬味もそれぞれワインと相性がよく、特にブルーベリーのジャムはワインと香りが調和していました。

ナパヴァレーでここまで繊細で綺麗に熟成するワイン、ましてシラー主体のワインは初めての経験でした。ナパワインの固定概念を打ち破るようなセレクションに感激した一日となりました。今後も定期的にナパヴァレーのワインについて書いていきますので、どうぞお楽しみに。

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