黄金のアリゴテ
ブルゴーニュの白ワイン品種、と言えばだれもがシャルドネと答えるでしょう。ブルゴーニュの白とほぼイコールで考えられているシャルドネですが、フィロキセラ以前はそれ以外にも多くの品種が植えられていました。今回テーマのアリゴテも、ブルゴーニュに永く根付いている品種です。今日はそんな陰に隠れがちな品種にスポットを当ててみましょう。
アリゴテの概要
アリゴテはPinot Noir x Gouais Blancの自然交配によってできた品種。シャルドネ・ガメイも実は同じ親で、これらは兄弟の関係にあります。Aligotéの名前の由来に2つの説があり、片親であるGouais Blancの中世の呼び名「Gouais」もしくは「Goet」に由来する説。もう一つはこのブドウの樹勢の強さに由来する説で、アリゴテは手に負えないほど樹勢が強く、他の品種よりもワイヤーでの誘因(縛り付け)を多くやらなければならない為、フランス語のLigoté「縛られた」に由来するという説。アリゴテは一般的にはシャルドネよりも酸が強く、果実の香りもシャルドネと共通した青りんごやシトラスの香りを持つも、香りの開きは控えめな為樽熟成に向かないとされており、バランスやポテンシャルの面でシャルドネの方が優れた品種とみなされがちです。ですが、近年の地球温暖化によりブドウの過熟が問題になってきた現況では、気候変動に対応した品種として注目を集めています。
Aligoté Doré
一般的に知られているアリゴテはAligoté Vert(緑のアリゴテ)と呼ばれるのに対し、一部のクローンはAligoté Doré (黄金のアリゴテ)と呼ばれ、低収量でより芳香性が高く、ワインにテクスチュア、豊潤さやエレガンスをもたらす、と言われています。
Bouzeronを中心にマッサール・セレクションで代々受け継ぎ、何世紀にもわたり品質を向上させてきた結果とされており、ドメーヌ・ド・ヴィレーヌ、ドメーヌ・ポンソやコント・アルマンなどが生産する高品質のアリゴテは、この品種の代表銘柄として知られています。
(アリゴテ・ヴェール(左)とアリゴテ・ドレ(右)。ドメーヌ・ド・ヴィレーヌのもので、房が小さく色合いも赤みがかっている。Source: chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.de-villaine.com/f/press-review/terroir-sense-wine-review-23rd-december-2021-93.pdf)
当店のアリゴテは調べた限りでは
Le Grappin
Comte Armand
Thibault Liger Belair
Camille Thiriet
の生産者のものがアリゴテ・ドレを使用していました。
テイスティング Le Grappin / Bourgogne Aligote 2021
このアリゴテ・ドレはマコンの標高400m、南向き、石灰質土壌という地理的条件に恵まれた僅か2haの土地に植わる隠れた良テロワールのもの。植樹も1930年というとても古い樹です。
つやのある淡い黄金色が印象的で、熟れたリンゴ、蜜漬けのレモンスライスといった果実の香りを主体に、ダージリンティーやスモークの香りが隠れており、熟度の高さと果皮の成分に由来する複雑な香りが感じられます。味わいはアリゴテらしい鋭く伸びる酸を感じますが、それ以上に印象的なのが滑らかなテクスチュア。オリーブオイルのようなトロッとした質感が鋭い酸とバランスを取り、余韻には出汁のような旨味を残します。
【小ネタ】キール・ロワイヤル
カシスリキュールを白ワインで割ったカクテル、一度は名前を聞いたことはあるでしょう。実はこれはブルゴーニュで生まれたカクテルで、ながくディジョン市長を務めたカノン・フェリックス・キール(Canon Félix Kir)市長の名前からとっています。キール市長が地元の特産物をプロモーションするにあたって、それぞれ地元の特産品であるカシスとアリゴテの白ワインを使ったカクテルを考案したと言われています。ご自宅でキール・ロワイヤルを造る時は、アリゴテを使うとオリジナルのレシピとして楽しめます。