真夏のロゼワインと食事

Written by 漆谷剛
ロゼワインの季節
暦の上では立秋となりましたが暑い日が続いていますね。こんな季節にはキンキンに冷やしたビールは夏のご馳走。ワインの興味も1年でもっとも薄くなっている時期かもしれません。
一方で、ロゼワインの美味しさに気づく季節でもあります。
燦燦と降り注ぐ太陽の季節は、「ロゼワインの良さがよくわからない」「ロゼワインの楽しみ方を知りたい」という方に、ロゼワイン、特にプロヴァンスロゼの魅力を体感していただく絶好の機会です。
ワインショップとワインダイニングの複合施設であるCellar Door Aoyama では定期的に、ワインと食事のたのしみ方をクローズアップしていきますが、今回は「真夏のロゼワインの楽しみ方」をテーマにしたいと思います。
 
ロゼワイン先進国フランス
フランスでのロゼワイン消費量は群を抜いています。白ワインより多くを消費するフランスですが、現在でも圧倒的なロゼワイン大国として君臨しています。
CIVP(プロヴァンスワイン委員会)2019年まとめによると、ロゼワイン消費量は圧倒的な首位で、なんと世界の消費量の35%を占めています。
2位はアメリカの25%3位ドイツ7%4位イタリアとイギリスの5%と続き、「ワイン大国」が順当にランクインしていますが、こと一人当たりの年間消費量で比べると、アメリカ人の年間消費量1.3リットルに対しフランスは約15.1リットル。もうひとつのロゼワイン消費大国のアメリカに、約10倍もの差を付けています。
日本は、ワインの消費そのものが3.2リットル(2018年国税庁)ととても少ないため、フランス人の年間消費量15.1リットルがどの程度のものなのかイメージすることは難しいと思います。そこで「とりあえず乾杯」の代名詞であるビールの消費量と比べてみることにします。
 
まずはロゼで乾杯
日本におけるビールの消費量は国民一人当たり年間約40リットル。
フランス人のロゼワイン年間消費量は、その量の約1/315リットル。グラスに注がれるワインは約100ml程度という事を考慮すると、日本人が中ジョッキ生ビールを乾杯する感覚で、フランス人はグラスのロゼワインを楽しんでいると言えるのです。
ビールの代わりにロゼワインで乾杯。実にワイン先進国らしい楽しみ方ではないでしょうか。
一方、日本ではロゼワインで乾杯はおろか、レストランのグラスワインやショップの品ぞろえに無いことも多く、楽しみたくても楽しめない環境なのも事実。ソムリエ資格試験で登場する機会がほとんど無く、ワインのプロである多くのソムリエやワイン販売員がその魅力を十分に理解していないことも、世界のロゼワイン文化に日本が取り残されている要因のひとつかもしれません。
 
ロゼ初心者の壁
この季節に楽しみたいロゼワインはなんといってもプロヴァンス産のロゼワイン。南フランスのヴァカンスでの定番ワインということもあり、真夏の日差しを横目にクーラーが効いた部屋でお昼からゆっくりと味わうと、日本にいながらもほんの少しだけ海外のリゾート気分を味わえます。
淡いサーモンピンク色をした美しい外観に、フレッシュなサクランボ、ラベンダーといった華やかな香り。どことなく海の潮風の様な塩気を感じる凛とした香りもあります。この可愛らしい外観と華やかな香りは、ロゼ初心者の方も魅了されると思います。
ロゼワイン好きの方であれば、この後に続く味わいも、実に心地よいものなのですが、この味わいの部分で親しみにくさを感じる方もいます。
誰もが魅了する華やかで親しみやすい色合いと香りに反して、クリスプな酸味とほんのりと苦みと塩味を感じるようなスパイス感があるので、プロヴァンスロゼの味わいは思いのほかタイトで厳格な印象を受けることがあります。
ロゼワインの味わいの構成は白ワインに近いと言われていますが、赤ワインと同じ色素があるという事は、白ワインには感じられないようなタンニンも含まれています。プロヴァンスのような「海のロゼ」はそこに塩味のようなミネラル感もプラスされるため、一層、タイトな味わいに感じることがあるのです。
 
真夏のロゼワインを食事と楽しむ
そんな少し取っつきにくい味わいも感じさせるロゼですが、相性の良い食事と合わせて楽しむと、その特徴をユニークな個性として楽しむことが容易になります。
ワインと料理を合わせるコツはたくさんありますが、似たような色あいと合わせていくのがシンプルで分かりやすいと思います。
熟成期間の短い淡いピンク色をした生ハムを薄くスライスしたものは、ロゼワインの果実の香りを引き立たせ、鉄っぽい香りが出ることがある赤ワインよりも相性の良さを感じさせます。生ハムの塩気も汗をかいた身体に染み入っていくかのようです。
生ハム類でも特におすすめなのは、少し酸味のあるミラノサラミです。
サラミの酸味とワインの酸味が同調するだけでなく、サラミが持つ油脂分がロゼワインのほのかなタンニンの収斂味をまろやかにさせ、ふくよかで優しい飲み口へと昇華します。
海の香りがたっぷりつまった貝類、中でもロゼワインのように淡いオレンジ色をしたムール貝も、おすすめの組み合わせです。
ムール貝に含まれる海のミネラル感と風味がプロヴァンスロゼの風味と同調し、ワインの持つ塩味を旨味のようなまろやかな味わいに変化させてくれます。ロゼワインの魅力をこの組み合わせで気づく方も多いので、ロゼワインの魅力にいまいちピンとこない方はぜひトライしてみてください。
海外旅行などが気軽にできない今年の夏だからこそ、ロゼワインを片手に「お家でのバカンス」をぜひお楽しみいただければと思います。