ドイツ辛口ワインの新時代 VDP
written by Bungo Matsunaga
ドイツにおいては近年、VDPと呼ばれる生産者団体が、畑の格付けを独自に行っています。これはワイン法ではなくあくまで生産者が自主的に行っている格付けなのですが、今やワイン法による格付けを脅かす存在となっています。近年起こっているドイツワインの著しい品質向上、その台風の目であるVDPを、今回は取り上げます。
VDPの発足と格付け運動
ドイツにおいて高品質ワインの生産を活発化させようとしたときに常に問題となっていたのが、ワイン法による規定です。ブドウの糖度によって階級が上がっていき、必然的に甘口のワインに高い階級が与えられてきました。甘いワインが貴重だった時代は過去の話。現代の辛口ワイン主流の時代において、辛口ワインは法律上、そのクオリティに関わらず下の階級になってしまうという問題を抱えていました。そこで1970年代に発足したのがVerband Deutscher Präikatsweinguter通称VDP。元々は1900年代初頭に設立されたVDNVという組織が母体なのですが、このVDPが設立してから約20年後の1990年代より、辛口ワインの格付けが本格化していきます。ラインガウでのブドウ畑の格付け運動に続いて1992年からブドウ畑を格付けするプロジェクトが始動。2001年産のワインに初めてGroßes Gewächsのワインがリリースされ、その後名称は紆余曲折を経て、2012年には今の4段階の格付けに落ち着きました。
Große Lage-グラン・クリュに相当
Erste Lage-プルミエ・クリュに相当
Ortswein-村名ワインに相当
Gutswein-エントリーレベル
単位面積当たりの収量制限をブルゴーニュのものと比較すると、格付け相応のクオリティを目指していることがわかります。
2021年現在では、VDPはドイツ各地から199の生産者が加盟しています。ちなみにVDPの鷲のマークはVDP.Adlerと呼ばれているそうです。
最上級のGroße Lageから造られたワインは、Großes Gewächs(Grosses Gewachs)と称し、「GG」の文字とブドウが合わさったロゴがレリーフされた特製ボトルに瓶詰めされます。このレリーフはドイツワインの最高品質である証です。また、Erste Lageには「1G」のマークがあります。筆者はまだ見かけたことはありませんが。
リースリング以外もGGを名乗れる
この最高等級Grosses Gewachsですが、実はリースリング以外も造ることが認められています。ドイツには13の生産地域がありますが、それぞれの地域で使用可能な品種が定められており、リースリングのみが許されているのは、モーゼルとナーエだけ。他の地域はピノ・ブランやピノ・グリにシャルドネ、シュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)などの黒ブドウの使用が許されている地域もあります。生産者が様々な品種で高品質を目指していることを考えると、「ドイツ=リースリング、たまにピノ・ノワール」の時代は間もなく終わりを迎えるのかもしれません。さらに多様な品種に目を向けていくと、ドイツワインがさらに楽しくなりますよ。
NaheのVDP生産者、Dönnhoff
Cellar Door AoyamaにもこのVDPに所属する生産者がいます。NaheのDönnhoff(デーンホーフ)です。この地域はRotenfelsと呼ばれる赤い石の土壌で知られており、他の地域に比べ小さな地域ですが、蛇行するナーエ川が生み出す多様な日照条件、土壌が魅力です。
ナーエの中央部、オーバーハウゼン村に位置しているデーンホーフは18世紀後期より上質のワインを生産し続け、創立者の孫であるヘルムートがデーンホーフのリースリングを世界的な成功に導きました。1920年代より高名な畑にリースリングを植樹し畑名でワインを瓶詰め、販売を始めています。現在はコーネリウス・デーンホーフが中心となりワインを生産しています。全部で9つのGrosses Gewachsを所有しています。
・Große Lage "Dellchen"(デルヒェン)
南西向き、とてもきつい傾斜の畑で、2つの崖に挟まれたスレートと斑岩土壌です。樹齢15-30年。
・Große Lage "Hermannshöhle"(ヘルマンスヘーレ)
こちらはソムリエの教本にも載っている歴史ある区画。ナーエ川が半円状に蛇行する箇所に位置するこの畑は、南東-南-南西の完璧な日照条件。険しい傾斜に川からの日光の照り返しと、ブドウが熟す上で最高の条件に恵まれています。樹齢も65年に及ぶものもあり、Grosses Gewachsを名乗るのにこれ以上ないほどの条件が揃っています。
11/13(土)-14(日)の週末テイスティングは、Dönnhoffの2つのGGを含む3アイテムのテイスティングをご提供します。ドイツワインの現在、そしてこれからを体験できる機会です。ぜひお越しくださいませ。
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